私の専門は偏微分方程式論です。偏微分方程式とは、独立変数とその未知関数、ならびに有限階数までその偏導関数に関する関数方程式のことであり、数理物理学・工学・微分幾何学などいろいろな分野に起源をもちます。私はその中でも波動現象を記述する方程式(波動方程式を代表とする双曲型方程 式とシュレディンガー方程式を代表とする分散型方程式)に興味をもち研究しています。研究のもともとの嗜好は、応用に現れる個々の偏微分方程式の個別的性 質を明らかにするというよりは、あるクラスの偏微分方程式に対してそれらを貫く基本性質(解の存在・一意性・特異性・漸近挙動、スペクトル的性質など)を明らかにすることにあります。もっとも最近はポテンシャルの形が限定されたシュレディンガー発展方程式を対象として、その解の特異性がいかに伝播するかというかなり具体的な問題に力を入れています。量子力学はプランク定数をゼロに近づけていくと古典力学で近似できると考えられていますが、同様に波動現象を 記述する偏微分方程式の解の特異性は、それに付随する正準方程式の解の漸近挙動で制御できると期待されています。この原則がいかなる条件下で正しく、いかなる条件下で崩れるのか、それを明らかにするのが上述の問題の中心課題です。さて平成17年度からは2人の修士1年生を指導することになり、これからはもう少し芸風を広げようかと考えています。