数学科紹介
大阪大学数学科は昭和6年大阪帝国大学創立と同時に創設されました。当初から新しいアイデアを進んで受け入れ、創造性を重んじる自由で生き生きとした雰囲気の中で日本の数学の近代化に中心的役割を果たしてきました。半世紀を越える歴史のなかで教員、先輩の努力によってこの伝統は引きつがれ、研究面では国際的に高い水準を保ってきています。数学は国境のない言語ともいわれますが、常に国際交流を盛んにすることを心がけています。毎年世界中の様々な国から多くの数学者が当学科を訪問していますが、このような来日数学者との交流ばかりでなく、当学科の教員は世界の大学や研究所に教育・研究のために進んで出かけています。また大阪市立大学と共同で数学雑誌を刊行しており、多くの論文が発表されて外国の多数の大学で研究に役立てられています。こうした活発な研究活動に裏づけられた講義は、それぞれ特色があり興味深いものとなっています。とくに、全く新しいコンセプトによる授業「実験数学」や、各学年向けにセミナー形式の授業が用意されていることなどは、他大学にはない特長といえます。
30年以上も前にコンピューターを用いて数学の大問題であった「4色問題」が解決したことは良く知られていますが、最近はさらにコンピューターを数学の各分野で使用することが多くなってきました。微分方程式の近似解を求めたり、その解の挙動をグラフィックに表すこと、方程式の整数解を求めたり、巨大素数をみつけるといったことなどに使われています。コンピューターの使用で今まで目に見えなかったものをみせることとか手計算で出来なかった複雑な数値実験ができるため、この傾向はますます強くなると思われます。本数学科でも計算機教育の充実に努めています。
本数学科の卒業生の進路についても少しお話しましょう。卒業生の多くが研究者になったり教職(高等学校)に就くというのが従来の傾向でしたが、ここ十数年の間に産業界で活躍する人も際だって増えてきました。コンピューターの発達で民間の会社が数学科の学生を要求しているせいでもありますが、そこでは数学科学生に共通する、問題を根底まで探求しなければやまない姿勢と抽象的な思考能力、さらに既成の枠にとらわれない自由な発想と異なった専攻分野への適応性が高く評価されています。例えば、民間の研究所に入り、大学で勉強したことと直接には関連しないような工学的な問題や社会学的な問題などにとりくんで優れた業績をあげている人も大勢います。
研究者になるためには大学院に進学するのが通常の方法です。大学院は前期課程(修士課程)2年と後期課程(博士課程)3年に分かれます。前期課程を終えて修士の学位を得たのち民間会社へ就職する人が増えています。また後期課程に進んでさらに研さんに努め研究者になる人もいます。数学科卒業生の進路調査がこれらのことをよく表しています。
数学は古くて新しい学問です。その歴史はギリシャの昔にまで、さかのぼることができますが、現在も次々と新しい問題が提出され、古い問題にも新しい光が投げかけられるなど、数学の歩みは留まる所を知りません。皆さんの中からも、本数学科で現代数学の息吹に触れ、自分も研究者になりたいと思うようになる人がきっと何人もでてくることでしょう。