続 LaTeX 入門
前回の講義で,LaTeX を用いた文書作成の基本的な流れはマスターできたことと思う.今日はより複雑な文書作成に挑戦しよう.
まずは サンプル を見てみよう.このように LaTeX を使うと,数式や図・表の入ったレポートを簡単に,しかも美しく仕上げることができる.
今日の目標は,このような文書を LaTeX で作成できるようになることにある.
上のサンプルは,次の LaTeX ソースファイルで作成したものである.そこでまず,先週作成した(はずの)TeX 作業専用のディレクトリに
sample.tex
というファイル名で次の文章を保存しよう. そして,このソースファイルをいろいろと加工し,新しい文書を作る作業を通じて,LaTeX の基本的な使い方を学ぼう.ともかく実践あるのみである.%--------------------------------------- % ドキュメントクラスの指定 %(なお % の後ろの文字は無視されるため,コメントとして使用できる.) %--------------------------------------- ¥documentclass[10pt, a4paper]{jarticle} %--------------------------------------- % プリアンブル %--------------------------------------- ¥topmargin -15mm ¥oddsidemargin -10mm ¥evensidemargin -10mm ¥textheight 250mm ¥textwidth 180mm ¥usepackage{graphicx} ¥usepackage{amsmath} ¥usepackage{amssymb} ¥usepackage{amsthm} ¥usepackage{float} ¥newtheorem{定理}{定理} ¥newtheorem{補題}[定理]{補題} ¥newtheorem{系}[定理]{系} ¥newenvironment{証明} {¥par¥noindent{¥bf 証明}¥quad}{¥hfill$¥Box$¥bigskip} ¥title{¥LaTeX の使い方} ¥author{ほげほげ 太郎¥¥ 大阪大学} ¥date{2017年某月某日} %--------------------------------------- % 本文 %--------------------------------------- ¥begin{document} ¥maketitle ¥begin{abstract} ¥LaTeX を使うとどんなことができるのかを簡単に説明します. まず,「概要」と書かれたこの部分には,論文のおおまかな内容を書きます. ¥end{abstract} ¥section{はじめに} 本稿では,¥LaTeX のごく基本的な使い方を説明します. もっと詳しいことは,例えば ¥LaTeX 関連の参考書¥cite{OkumuraKuroki:2017}や web 上にある解説記事¥cite{Wiki}などを参考に, 各自で調べてください. ¥section{¥LaTeX で数式を書く} ¥LaTeX を使うと,様々な数式を美しく表示することができます. 例えば,¥underline{Lagrange 方程式} ¥begin{equation} ¥label{eqn:Lagrange} ¥frac{d}{dt}¥left(¥frac{¥partial L}{¥partial ¥dot q_i}¥right) -¥frac{¥partial L}{¥partial q_i}=0 ¥end{equation} や ¥underline{Schr¥"odinger 方程式} ¥begin{equation} ¥label{eqn:Schrodinger} i ¥hbar ¥frac{¥partial}{¥partial t}¥psi=¥left[-¥frac{¥hbar^2}{2m}¥nabla^2+V ¥right]¥psi ¥end{equation} なども簡単に書くことができます. 因みに,(¥ref{eqn:Lagrange}) は解析力学で, (¥ref{eqn:Schrodinger}) は量子力学で登場します. 行列を書くのも簡単です.例えば ¥begin{equation} ¥label{eqn:Pauli} ¥sigma_x= ¥left[¥begin{array}{cc} 0 & 1 ¥¥ 1 & 0 ¥end{array}¥right], ¥quad ¥sigma_y= ¥left[¥begin{array}{cc} 0 & -i ¥¥ i & 0 ¥end{array}¥right], ¥quad ¥sigma_z= ¥left[¥begin{array}{cc} 1 & 0 ¥¥ 0 & -1 ¥end{array}¥right] ¥quad ¥end{equation} は ¥underline{Pauli のスピン行列}と呼ばれる行列で, やはり量子力学などで活躍します. ¥section{¥LaTeX で定理と証明を書く} ¥LaTeX を使うと,定理やその証明も簡単に% ¥footnote{ ただし,「定理」「補題」「証明」などの 環境をあらかじめプリアンブルに定義しておく必要があります. }% 書けます. ¥begin{補題}¥label{lem:Rolle} $f(x)$は $[a,b]$ で連続,$(a,b)$ で微分可能であって, $f(a)=f(b)$ とする.このとき,ある $¥xi¥in(a,b)$ が存在して ¥[ f'(¥xi)=0. ¥] ¥end{補題} ¥begin{証明} テキスト ¥cite{Sugiura} を参照せよ. ¥end{証明} 補題~¥ref{lem:Rolle} は Rolle の定理と呼ばれる定理であり,これからただちに次の有名な Taylor の定理が得られます. ¥begin{定理}¥label{thm:Taylor} $f(x)$は $[a,b]$ で $n-1$ 回連続微分可能,$(a,b)$ で $n$ 回微分可能とする.このとき, ある $¥xi¥in(a,b)$ が存在して ¥[ f(b)=¥sum_{k=0}^{n-1}¥frac{f^{(k)}(a)}{k!} (b-a)^k+¥frac{f^{(n)}(¥xi)}{n!} (b-a)^n. ¥] ¥end{定理} ¥begin{証明} テキスト ¥cite{Sugiura} を参照せよ. ¥end{証明} ¥section{¥LaTeX で表を作成する} 表も簡単に書けます. ¥begin{table}[H] ¥caption{セ・リーグ順位表(2016年)} ¥label{tbl:baseball} ¥begin{center} ¥begin{tabular}{@{¥vrule width0.8pt~}l|c|c|c|c|c|c@{~¥vrule width 0.8pt}} ¥noalign{¥hrule height0.8pt} %¥cline{1-7} チーム& 試 & 勝 & 敗 & 分 & 率 & 差 ¥¥ ¥hline¥hline 広島 & 143 & 89 & 52 & 2 & .631 & -- ¥¥ 巨人 & 143 & 71 & 69 & 3 & .507 & 17.5 ¥¥ DeNA & 143 & 69 & 71 & 3 & .493 & 19.5 ¥¥ 阪神 & 143 & 64 & 76 & 3 & .457 & 24.5 ¥¥ ヤクルト & 143 & 64 & 78 & 1 & .451 & 25.5 ¥¥ 中日 & 143 & 58 & 82 & 3 & .414 & 30.5 ¥¥ ¥noalign{¥hrule height0.8pt} ¥end{tabular} ¥end{center} ¥end{table} 上の表~¥ref{tbl:baseball}は2016年のセ・リーグ順位をまとめたものです. ¥section{¥LaTeX に図を挿入する} eps 形式で書かれたグラフィクス・データを外部から取り込み, 文中に図として挿入することもできます. ¥begin{figure}[H] ¥begin{center} ¥includegraphics[width=65mm]{sample.eps} ¥end{center} ¥caption{極値問題} ¥label{fig:fig1} ¥end{figure} 上の図~¥ref{fig:fig1} は,関数 $f(x,y)=x^3-3xy+y^3$ の グラフを原点付近で描いたものです. 点 $(x,y)=(1,1)$ で極小値をとることが分かります. ¥section{¥LaTeX で箇条書きする} 箇条書きを使うと,文書にリズムが生じて読みやすくなります.例えば itemize 環境を用いると: ¥begin{itemize} ¥item ここは itemize 環境の第1レベルの第1項 ¥item ここは itemize 環境の第1レベルの第2項 ¥begin{itemize} ¥item ここは itemize 環境の第2レベルの第1項 ¥begin{itemize} ¥item ここは itemize 環境の第3レベルの第1項 ¥item ここは itemize 環境の第3レベルの第2項 ¥end{itemize} ¥item ここは itemize 環境の第2レベルの第2項 ¥end{itemize} ¥item ここは itemize 環境の第1レベルの第3項 ¥end{itemize} あるいは enumerate 環境を用いれば,各項目に番号をふって ¥begin{enumerate} ¥item ここは enumerate 環境の第1レベルの第1項 ¥item ここは enumerate 環境の第1レベルの第2項 ¥begin{enumerate} ¥item ここは enumerate 環境の第2レベルの第1項 ¥begin{enumerate} ¥item ここは enumerate 環境の第3レベルの第1項 ¥item ここは enumerate 環境の第3レベルの第2項 ¥end{enumerate} ¥item ここは enumerate 環境の第2レベルの第2項 ¥end{enumerate} ¥item ここは enumerate 環境の第1レベルの第3項 ¥end{enumerate} とすることもできます.もちろん,itemize 環境と enumerate 環境を組み合わせて使うこともできますし,他にも description 環境なども使えます. ¥section{あとがき} 以上見てきたように,¥LaTeX を用いれば見栄えの良い文書が簡単に作成できますので,ぜひ使い方をマスターして下さい. ¥begin{thebibliography}{99} ¥bibitem{OkumuraKuroki:2017} 奥村晴彦,黒木祐介「¥LaTeX $2_{¥scalebox{1.1}{$¥varepsilon$}}$ 美文書作成入門」改訂第7版(技術評論社) ¥bibitem{Wiki} {¥sf https://texwiki.texjp.org/?LaTeX¥%E5¥%85¥%A5¥%E9¥%96¥%80} ¥bibitem{Sugiura} 杉浦光夫「解析入門 I」(東京大学出版会) ¥end{thebibliography} ¥end{document}
上で作ったサンプルファイル
sample.tex
をコンパイルしてみよ.「sample.eps
というファイルがない」というメッセージと共に,エラーで停止するはずである.そこで一旦,sample.tex
のコンパイルは中断しよう.そして, 上述のグラフィックデータ sample.eps を LaTeX 作業用のディレクトリにダウンロード(マウスで右クリックして「リンク先のファイルを保存」を選択)し,改めてコンパイルしてみよ.
以上の作業がうまくいったら,次に,LaTeX に関する記事:
と上記サンプルファイル
sample.tex
とを見比べながら,以下のことについて学ぼう.
- ドキュメントクラスとは何か? どのようなスタイルがあるのか?
- プリアンブルとは何か? この部分には,どのようなことを書くのか?
- 文書のスタイルにはどのようなものがあるのか?
- 文書のレイアウトにはどのようなものがあるのか?
- どのような文字飾りが使えるのか?
- どのような環境が書けるのか?
- どのような数式が書けるのか?
- 図・表を作成するには,どうしたらよいか?
- 定理,図,表,および論文などの相互参照方法は?
そして,学んだことを実践するため,上記
sample.tex
をどんどん改訂し,様々な文書を作成してみよ.
以下の第1〜2節に記載された課題に LaTeX を用いて取り組み,これらに『タイトル・アブストラクト・参考文献』の項目を追加して論文形式にまとめ,レポートとして提出せよ.
レポート提出方法 は以下の通り.
作成したレポートを pdf ファイルに変換する.その際,ファイル名は半角英数字で
学籍番号.pdf
とする.例えば学籍番号が 04A17999 なら,04A17999.pdf
とする.
CLEにログインし,コース一覧から「情報活用基礎」を選択.
左側のメニューから「コンテンツ」を選択し,「レポート課題(LaTeX)」への回答として,上で作成した pdf ファイルを提出する.
提出期限は7月31日(月)午後7時 とする.
提出に際し,以下の点に留意せよ.
LaTeX 以外のワープロで作成したものや,他人のレポートをコピーしたものは,採点の対象外とする.
説明がいいかげんだったり不十分なものは,減点の対象とする.
逆に,高度な技巧を駆使した痕跡が見られるものは,加点の対象とする.
CLEにログインし,コース一覧から「情報活用基礎」を選択.
左側のメニューから「コンテンツ」を選択し,「第14回 出席確認テスト」に回答・提出する.