コメントつき論文リスト
数学的内容を正確に紹介することにはこだわっていません。
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[0] Adjoint quotient map の相対 de Rham コホモロジー.
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修論。
齋藤先生の原始型式の一般論により、超曲面孤立特異点の普遍変形族の
相対ドラームコホモロジーには様々な構造が入ることが
知られています。ADE型特異点の場合は、普遍変形族が随伴商写像の
制限として得られることが知られており、その場合には
山田浩嗣先生が、コスタント・キリロフ形式と原始形式が一致することを
示していました。私に与えられたテーマは「随伴商写像そのものの
相対ドラームコホモロジーにおけるコスタント・キリロフ形式の役割を調べ、
ADE特異点に対して原始形式の理論全体をリー群論的な言葉で記述すること」でした。
予想された構造(の一部)が現れることを不変式論的手法で示しました。
修論の主要部は
プレプリントの準備だけはしていましたが、
当時は原始形式の理論の文脈で論文を出すのは恐れ多いと感じて
どこにも出さず(ある所で講演した際に
興味を持って頂き、倉西先生にお送りしただけだったと思います)、10年後に
出版しました。
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[1] The primitive derivation and freeness of multi-Coxeter arrangements.
Proc.
Japan Acad. Ser. A Math. Sci. 78(2002), no. 7, 116-119.
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修士論文[0]の最後のステップで、コクセター多重配置の自由性に関する
寺尾先生の結果を使ったのですが、
その後、寺尾先生の結果と齋藤先生の結果の対応関係に関する寺尾先生の
講演を関西セミナーハウスで聞いて、
「逆に寺尾先生の結果は斎藤先生の論文+εで証明しなおせるはずだ」と
思って「+ε」部分をやったもの。
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[2] On the freeness of 3-arrangements.
Bull.
London Math. Soc. 37(2005), 126-134.
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[1]を書いたのがきっかけで、Edelman-Reiner 予想なるものが
あることを知り、
予想そのものは解けなくても部分結果くらいは得られないかな、
と思ってD1の頃いろいろ考えていました。
秋頃に関連する命題を思いついて、
ボチボチ勉強しながらこれでも考えようと思ってのんびりやっていたら、正月明けに
関係者のページを巡回していた際に、Athanasiadis 氏が
まさにその主張を主定理とするプレプリントを書いているのを見つけて、
ショックを受ける。
「自分に思いつける程度のことは、経験豊富なプロなら当然思いついて、
しかもすぐに証明できるのだな」と激しく
打ちのめされて、とにかく何でもいいからやらねば、と必死になって得たのが
この論文の主結果です。
恐る恐る専門家に知らせても、反応がなにもなかったので、やはりこの程度
ではプロには相手にしてもらえないのか、と Edelman-Reiner 予想本体ができてから
プレプリントにしました。
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[3] Characterization of a free arrangement and conjecture of Edelman and Reiner.
Invent. Math. 157(2004), no. 2, 449-454.
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D論。D1の年度末かD2の初頭に、論文を読み漁っているうちに運よく、
Okonek, Schneider, Spindler, Vector bundles on complex projective spaces
に巡り合いました。
そのなかにある Horrocks の古典的結果を使うと、Edelman-Reiner 予想が
すぐにできるのでは?と思って、Horrocksの定理の仮定が Edelman-Reiner の
場合にすぐチェックできるかどうか専門家に聞いたら「わからない」という
答えが返ってきました。Horrocks の結果だけではだめで、少し一般化する必要が
あったのですが、そこは Google でたまたまヒットした、Hartshorne の論文を
真似てできました。
出来てしまえば予想の一番難しいところは全部寺尾先生の論文でなされていました。
D論公聴会は、大変緊張しました。
前にも後にもあれほど緊張したことはありません。
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[4] Free Arrangements over Finite Field.
Proc.
Japan Acad. Ser. A Math. Sci. 82(2006), no. 10, 179-182.
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寺尾先生の推薦のお陰で
2004年にMSRIであったアレンジメント・セメスターに3か月参加しました。
その間、同じオフィスだった Wakefield さんや寺尾先生と
「寺尾予想に反例があるとすると、
何枚以上か?」ということを延々と議論していました。そういう文脈で、
有限体の場合は、超平面の枚数がかなり多いと、自動的に寺尾予想が成立
してしまうということに気づいて書きました。
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[5] Hyperplane arrangements and Lefschetz's hyperplane section theorem.
Kodai
Math. J. 30, no. 2 (2007), 157--194.
arXiv:math/0507311
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Edelman-Reiner 予想に関する研究が一段落したころ、アレンジメントではトポロジーが
流行っているように感じて、「極小性」というテーマを勉強しました。
その頃参加したけいはんなでの「数学者のための分子生物学入門」で、
バイオインフォーマティクスの学生さんに個人的に「基本群とはなにか」に
ついて教えている際に、ひらめきがあって、自分なりの
視点を得、少したってもう一つのモース理論的なアイデアがあって、
その後半年間苦労して書き上げました。代数多様体のトポロジーの一般論で、
レフシェッツの超平面切断定理は、最も重要な定理だと思われますが、
実アレンジメントの補集合という特殊性をフルに使ってもう一歩
踏み込めたと思っています。
超平面切断へ張り付いているセルのホモトピー型の明示的な記述というのは、
(ブーケになる場合や1次元など)自明なケース以外ほとんど
知られていないのではないかと思います。
複素アフィン多様体でモース理論的なセルの貼りつき方が記述できた
数少ない例ではないかと思い、現時点(2019年4月)では一番気に入っている結果です。
この結果を口頭で初めて発表したのは2005年のスイスのAsconaで、
Dimca, Papadima, Suciu, Falk, ... と, この方面のトポロジストがそろった
会議でした。国内外を問わず、純粋に位相幾何的な内容の研究
講演をする初めての機会で、入念に準備をして臨みました。
講演後、Papadima さんから話しかけられて
「ちょっと聞きたいことがある。でもたばこが吸いたいから外で話そう」と
誘われて、ついていって言われたのは「お前の結果、どこか間違ってると思う。
講演で出てきた chain complex の境界写像のあそこの係数は0になるはずだ」
というコメントでした。
しかしそれは学位取り立ての若造にもわかる
明らかな誤解で「自明な係数の場合はそうだが、
講演で扱ったのは局所系係数付きの複体なので、0でない係数が出てくる」と
答えて話は終わりました。プロならその一言で完璧に通じるはずだ、と
思い込んでいましたが(私の英語が拙かったせいかもしれませんが)どうも
ルーマニアグループに
誤解された状態はその後もずっと続いていたらしいことを8年後に知りました。
(2010年にPisaで講演した際に、Suciuさんがようやくアイデアをわかってくれた
らしいこと([20]参照)を表明してくれ、2013年にSuciuさんが札幌に来た際に、
Milnor fiber のモノドロミー固有空間の次元の計算や、局所系係数ホモロジーの
計算を黒板でやって見せて、彼がコンピュータで実行した多くの計算結果を正確に
再現できるのを目の当たりにして、ようやく認めてくれたようで、
「実はお前の論文、どこか間違っているのでは、と思っていた」と
のことでした。)
(Papadimaさんは2018年1月に亡くなりました。すごくたくさん話した、というわけでは
ないですが、新しいことを始めるタイミングで、encourage してもらった印象ばかり
思い出されます。)
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[6] (with T. Abe)
Splitting criterion for reflexive sheaves.
Proc.
Amer. Math. Soc. 136 (2008), 1887-1891.
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D論公聴会のあと、M先生から「あの証明法で、こういうことが
示されるのではないですか?」と尋ねられて、阿部さんと共同で
細部を埋めたものです。
ベクトル束の分裂に関する Horrocks の判定法、というのは、いくつかの
バージョンがありますが、そのうち一つを反射層まで一般化しました。
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[7] Generic section of a hyperplane arrangement and twisted Hurewicz maps.
Topology
and Its Applications. 155 (2008) 9, 1022--1026.
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何年か前から持っていたネタ。超平面配置の補集合で Hurewicz 写像を考えると
恒等的に消えてしまう(Randell)のと対照的に、
局所係数付き Hurewicz 写像なるものを
考えると全射になることがあることを指摘しました。
Dimca-Papadima の論文を見ていて、
彼らは実質的に知っていると気づいて「こんなものを公開したら Dimca,
Papadima に一生笑われる」と思って放っておいたのですが、
トリエステに Papadima 氏が
来た際に、意外と面白がってくれたので、方針転換して投稿しました。
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[8] (with K. Ueda)
Logarithmic vector fields along smooth plane cubic curves.
Kumamoto Journal of Mathematics. Vol 21 (2008), 11-20.
arXiv:0710.1912
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平面三次曲線の log form の層から元の曲線を復元できることを示しました
(トレリ型問題)。
なんとなくこういう問題があり得ることは、前から考えていたのですが、
京都で Dolgachev 氏の講演の後に、植田さんから
「楕円曲線のトレリ型問題やりましょう」
と誘われて、真面目に考え始めました。
最初はどう手をつけたらいいのかわからなかったのですが、
New Orleans 出張中に、Hessian 型をした三次曲線でパラメーターを
動かして、対数的ベクトル場の jumping line を計算してみると、
たしかに「構造がうごいている」ことが観察できてとても興奮たことを
憶えています。
後日談(喜ぶべきか悲しむべきか):
後に Dolgachev 氏と話している時に「そういえば最近日本人から
面白い論文が送られてきけど、お前知ってるか?三次曲線の・・・」
「知ってるかも何も、私その著者です。
共著者があなたに送ったのだと思います。。。」
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[9] (with M. Wakefield)
The Jacobian ideal of a hyperplane arrangement.
Math.
Res. Letters. Vol 15 (2008), no. 4. 795--799.
arXiv:0707.2672
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今度は超平面配置のヤコビイデアルから元のアレンジメントを復元できることを
示しました。
New Orleans 出張中は植田さんとのメールのやりとりで、
復元定理がブームでした。
一方当地では Wakefield さんから「ヒルベルトスキーム扱ってみたいんだけど、
なにをやったらいいかな?」と言われたので、安直に「じゃあ
復元定理でもやったら?」と一緒に考え始めました。
Macaulay2 を使って、その場で
すぐにいろいろなイデアルのヒルベルト関数を計算してくれる様子に
衝撃を受けました。論文はできてしまえば、本質的な部分はただのパズルです。
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[10] Chamber basis of the Orlik-Solomon algebra and Aomoto complex.
Arkiv for Matematik.
vol 47 (2009), 393-407.
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[5]の応用を目指したもの。極小セル分割は局所系ホモロジーの計算に応用
できると期待されているにも関わらず、決定的な応用はなされていません。
とりあえず「局所係数付き極小チェイン複体」を計算するアルゴリズムを
編み出した。珍しくレフリーからなんの
改善点も指摘されずに一発アクセプト。
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[11] On the extendability of free multiarrangements.
Arrangements, Local Systems and Singularities:
CIMPA Summer School, Galatasaray University, Istanbul, 2007,
273--281,
Progress in Mathematics, 283, Birkh\"auser, Basel, 2009,
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イスタンブールのサマースクール報告集。
イスタンブールでは極小セル分割の入門講義をやったのですが、
講義録を作っても自分の論文のコピペサマリーになってしまう気がして、
代わり「研究ノート」として、これを投稿しました。
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[12] (with K. Ueda)
Logarithmic vector fields along smooth divisors in
projective spaces.
Hokkaido Math. Journal, vol. 38, no. 3, 409--415, 2009.
arXiv:0802.2133
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トレリ型問題第二段、さしあたっての最終版。
実質的に植田さん一人でやってくれました。クラスノヤルスクのバスの中で、
彼からアイデアを聞いた時は半信半疑で、
数ヵ月後に僕が理解できた時点でようやくプレプリントになって投稿されました。
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[13] (with T. Abe and
H. Terao) Totally free arrangements of hyperplanes.
Proc.
Amer. Math. Soc. 137 (2009), 1405-1410.
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「どんな重複度を乗せても自由となる超平面配置は自明なものしかない」ことを
示しました。
もともと寺尾先生と阿部さんが「実数係数」という条件下でやっていたところ、
「一般の体」でできることを指摘して、共著者に加えてもらいました。
後で考えたら、元の証明は実数体に限ればより強いことを言っていて、完全に
書き直してしまったのは少しもったいなかったかもしれません。
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[14] (with T. Abe) Coxeter multiarrangements with quasi-constant multiplicities.
Journal of Algebra, 322 (2009) 2839-2847.
(arXiv:0708.3228)
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トリエステに阿部さんが来た際に、
A_3 型での面白い実験結果をいろいろ教えてもらい
ました。それをもとに、一般のコクセター配置で成り立つ結果が見つかりました。
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[15] Periods and elementary real numbers
arXiv:0805.0349
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Kontsevich-Zagier の Periods を読んだのはトリエステに行ってすぐの
頃だったと思います。「これは実数の根幹にかかわる問題に触れているから、
基礎論的なことも避けて通れない」と感じ、神戸に移ったのを機に最初の一年は
もっぱら基礎論の勉強についやしました。「代数的数/超越数」のように代数的性質
に注目して実数を分類するのではなく、
コーシー列を生成するアルゴリズムの複雑性に注目して、
実数にヒエラルキーを導入する、という Turing のアイデアに感動して、
その勢いで書いたものです。いろいろな形で
反響が
ありました。
Turing のアイデアの鋭さが多くの人の心を打ったのだと思います。
以下に引用するのは Turing の論文(いわゆる Turing machine を定義した論文)
On computable numbers, with an application to Entscheidungsproblem
の冒頭の一文です。
The computable
numbers may be described briefly as
the real numbers whose expressions as a decimal are
calculable by finite means.
Turing は旧約聖書の創世記の冒頭「光りあれ」から始まる
天地創造の部分を意識していたのではないかと思っています。
古今東西、神話は「光と闇」「天と地」「海と陸地」など人間理性の
コントロールが及ぶ範囲とそれ以外を分離するところから始まる傾向にあります。
神話の最初で神様が光と闇、天と地、陸地と海を分けたように、
人間に扱うことのできる実数とそうでない実数を
最初に区別しようとしている点に
深く感銘しました。
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[16]
Minimality of hyperplane arrangements and basis of local system cohomology
Singularities in Geometry and Topology Strasbourg 2009,
IRMA Lectures in Mathematics and Theoretical Physics Vol. 20,
345-362.
arXiv:1002.2038
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超平面配置の補集合の局所系係数コホモロジーについて「局所系が○○を
満たせば、中間次元のコホモロジー以外は消える。また中間次元コホモロジーは
有界領域で生成される」
というタイプの結果がいくつかあります。「○○」の部分が
色々考えられていたのですが、極小セル分割の記述の応用として、
Cohen-Dimca-Orlik の論文にある条件が、
(2次元の場合は)最良であることを証明しました。つまり
「コホモロジーの消滅+有界領域で生成」が起こるための必要十分条件を
明らかにしました。
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[17] Arrangements, multiderivations, and adjoint quotient
map of type ADE.
Arrangements of Hyperplanes---Sapporo 2009, ASPM, vol. 62, 523-552.
arXiv:1009.5298
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2009年に札幌であった会議の講義録。
読んで欲しいと思っているのは、マイナーな進展で、
例えば §2.5, §4.2 など。個人的に重要なことは、
ようやく修論[0]の主結果を出版できたことです。
現在のところ、
アレンジメントそのものの研究以外で「重複度付き対数的ベクトル場」が自然に現れる
場面と言うのはあまりないと思います。
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[18]
(with S. Nazir) On the connectivity of the realization spaces of
line arrangements.
Annali della Scuola Normale Superiore di Pisa, Vol. 11 (2012), 921--937.
(arXiv:1009.0202)
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「指定された『交わり方』をする直線配置のモジュライ空間はいつ既約になるか?」を
調べました。モジュライが既約になるための十分条件をいくつか与え、
応用として、9本以下で既約でないモジュライを持つ
配置の組合せ論型が実質的に3パターンしかないことを示しました。
(特にn=9の場合の)証明は膨大な場合分けによるので
書き下しませんでしたが、そこの部分は最近
arXiv:1112.4306として出たようです。
ピサでした共同研究なのでピサの雑誌に出したのですが、アクセプトから出版までが大変遅く
ほとんど同じアイデアで書かれた論文
が先に出てしまいました。
ちなみにこの雑誌は、今まで投稿した中で一番長い歴史を持つ雑誌なので、
100年くらい前にどういう人々の論文が載っているのか眺めてみると、
Fubini, Caratheodory, Fejer, Haar, Frechet, Vitali, Ascoli
とルベーグ積分の授業で聴いたことのある名前がたくさんありました。
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[19]
(with K. Ito) Semi-algebraic partition and basis of Borel-Moore homology of hyperplane arrangements.
Proc. A. M. S. 140 (2012), 2065--2074.
arXiv:1102.2039
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京都に移って以来伊藤さんとはほとんど毎週議論していて、
実質的にはかなり前(2009年末くらい?)にできていた気がするのですが、
私が海外出張中に議論が失速(メールが半年で二往復しかしなかった)、
出版がだいぶん遅れてしまいました。
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[20]
Minimal stratifications for line arrangements
and positive homogeneous presentations for fundamental groups.
Configuration Spaces: Geometry, Combinatorics and Topology, 503-533, CRM Series, 14, Ed. Norm., Pisa, 2012.
arXiv:1105.1857
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二次元の場合(つまり直線配置)の補集合に対して、[5]のセル分割の
双対にあたるstratificationを導入。[5]のセル分割は、モース理論に
依っており、代数的には定義できないセルをつかうのですが、双対の stratification
は semi-algebraic の範囲でできる点を気に入っています。
ピサの会議のプロシーディングですが、この時の講演後にSさんが
「ようやくお前が何をやりたいのか分かり始めた!」とコメントしてくださいました。
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[21]
(with T. Abe)
Free arrangements and coefficients of characteristic polynomials.
Math. Z, 275 (2013) 911-919.
(arXiv:1109.0668)
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[2]と[3]を高次元に一般化する試みとしてSchulze氏が「(制限の自由性とtameness
条件の下)二種類の特性多項式が一致すれば配置の自由性が示せる」という結果を
出しており、一方で阿部さんは特性多項式の係数たちの間に成り立つ不等式に
こだわっていて、このあたりを
なんとかスッキリ理解できないものかというのが動機でした。
結局 Schulze氏 の tameness 条件は不要で、
さらに特性多項式の2番目の係数に注目する
だけで自由性が示せるということが分かりました。
[2], [3]を書いた当時は想像もできなかった
強い結果に到達しました。
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[22]
Freeness of hyperplane arrangements and related topics.
Annales de la Faculte des Sciences de Toulouse, vol. 23 no. 2 (2014), 483-512.
arXiv:1212.3523
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2012年6月にフランスのPauであったサマースクールの講義ノート。
斎藤先生の鏡映群の原始ベクトル場の理論を解説するというのが目標だったのですが、
残念ながらそれは果たせませんでした。しかし今回の準備のおかげで
10年前よりは(私の斎藤先生の論文に対する)理解が進んだ気がしますので、
そのうち隅まで理解して自分なりの解説を書けるようになりたいです。
多重配置に関しては多くの論文に結果が散らばっているので、
文献案内くらいにでもなればと期待しています。
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[23]
Milnor fibers of real line arrangements.
Journal of Singularities, vol 7 (2013), 220-237.
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Pauでは表向きは自由配置の3回講演をしたのですが、極小性関係の非公式
セミナーも開いてもらい、捻じれコホモロジーを計算するアルゴリズムの話を
しました。その際に聴衆からミルナーファイバーのベッチ数が組合せ論的に
決まるかどうかが未解決であると教わり、帰国してから
ミルナーファイバーへの応用を考え始めました。すぐにベッチ数の計算アルゴリズム
が定式化でき、試しに
Grunbaum
のカタログ
にある直線配置のミルナーファイバーのベッチ数を全て計算してみました。
興味深い現象や定性的性質が、どうまとめたらいいのか分からないくらいザクザク
たくさん見つかって、数日間ずっと興奮状態でした。
秋にこの結果を持ってZaragoza, Niceをまわった際には、今後やるべき方向性が
いくつか見えてきて大変有意義でした。
Grunbaumのリストは元々1971年に公表されたもので、寺尾先生が
(1977年頃)このリストにある配置が自由かどうかを一つ一つ調べていったことが
自由配置の理論の出発点だったと聞いています。
35年たって、Grunbaumのリストから新たに
面白いことを見つけられたことがとてもうれしかったです。
これまではどちらかというと「分類表を作るというような仕事はそれほど重要とは
思えない」という考えだったのですが、分類表というのは、あれば
それを眺めながら色々夢想できる楽しいものだと考えを改めました。
とりあえず実験してみるためのサンプルの供給源としても重要だと思いました。
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[24]
Resonant bands and local system cohomology groups for
real line arrangements.
Vietnam J. Math. 42 (2014), no. 3, 377-392.
arXiv:1301.1888
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Zaragoza滞在中にホストのEABさんから、上のミルナーファイバーのベッチ数の
アルゴリズムに関して「それって、少し条件を付けた局所系係数コホモロジーの
計算にも使えるのでは?」という指摘を受けて、考えてみると、
色々な計算が劇的に簡単になることが分かり、論文にすることにしました。
この
方面では特性多様体(階数1の局所系のモジュライ空間の中で、
コホモロジーがジャンプしている点全体)
を求めることが主要テーマなのですが、deleted B3 配置という
有名な例に応用してみると、今までは7×12行列(成分は7変数ローラン多項式)の
ランクが下がっている所を記述する必要があったのですが、今回のアルゴリズムでは
3×6行列まで小さくなりました。これまではコンピュータ頼りだった計算が
手計算できるところまで簡単になりました。(さらに行列の形の特殊性から
行列式は2×2の計算だけでできました。)
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[25] (with Hiroaki Terao)
超平面配置に関する最近の話題, 数学, 66 (2014) 157-179.
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おそらく寺尾先生の代数学賞受賞に関連して、超平面配置の関係の総説を
雑誌「数学」から寺尾先生にお願いすることになっていたのだと思います。
私にも依頼が来たのは、たまたま近くにいたことと、依頼の時点で寺尾先生が
理学研究院長の要職についておられたからではないかと想像しています。
話題の選択は自然と著者の趣味を反映しています。
依頼されてそれなりの分量のものを書くというのは、なかなか大変なものだと
知りました。
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[26]
(with S. Nazir and
M. Torielli)
On the admissibility of certain local system.
Topology and its applications, 178 (2014) 288-299.
arXiv:1311.1848
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「直線配置の補集合の局所系係数コホモロジーが組合せ論的に決まるか?」
という未解決問題があり、これを目指した多くの研究があります。その中の一つに、
「局所系が "Admissible" ならば、局所系係数コホモロジーが組合せ論的に計算可能」
という定理が昔から知られています。その後、
「これこれこういう直線配置の場合は全ての局所系が admissible」という
ような結果がいくつか研究されていました。しかしそれらの研究は、面白い
直線配置は捕らえそこなっており、
むしろ「Non admissibleな局所系がどれくらいあるか?」
を問題にしたいと少し前から考えていました。
2013年の7月にNazirさんが札幌に
一カ月滞在した機会に、Nazir さん、 Torielli さんと一緒に
この問題を考え、局所系のモジュライ空間の中で
Non-admissibleな局所系がどのように分布しているかという問題について、
いくつか新しい知見が得られました。この内容について
Torielliさんがアメリカで講演した際に、Suciuさんから
「昔、論文にできなかったけど、自分だけで使っていた直感に基づいた
秘密の計算テクニックがあって、それに関係していそうな気がする」という
コメントを頂きました。基礎的な結果だとは思うのですが、Suciuさんの
コメントの通りで、その意義をうまく述べるのは難しいとも感じています。
問題の本質的な重要性は全く変わらずに残っているので、また将来真面目に考える
機会があるような気もします。忘れる前にちゃんと書いて出版できてよかったです。
(アクセプトしてくれたエディターとレフリーに感謝です。)
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[27]
Resonant bands, local systems and Milnor fibers of real line arrangements.
PDF,
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[28]
(with
P. Bailet)
Degeneration of Orlik-Solomon algebras and Milnor fibers of complex line arrangements.
Geometriae Dedicata, vol. 175 (2015) 49-56.
arXiv:1312.1771
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2012年にNiceに滞在した時から、実直線配置のミルナーファイバーに関する結果を
複素化しよう、という相談をDimcaさんとしていました。2013年に日仏越の特異点集会が
Niceであり、その際にDimcaさんの学生のBailetさんと話していて、彼女がD論で使って
いた、有限体上の青本複体を使ってミルナーファイバーのコホモロジーのモノドロミー
固有空間の次元を押さえる話を聞いて、共同研究を始めました。個人的にはDimcaさんを
含めて三人の仕事のつもりだったのですが、プレプリントを書き始めた時点で、
Dimcaさんからは固辞されて、結局著者は二人になりました。
この論文で導入したOrlik-Solomon代数の「退化写像」は、『三つ組:A, A', A''』を
使った帰納的議論には及ばないにしても、それなりに
汎用性のある基本的なテクニックなのではないか、と
密かに期待しています。
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[29]
(with M. Torielli)
Resonant bands, Aomoto complex, and Real 4-nets.
Journal of Singularities, vol. 11 (2015), 33-51
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2013年の秋から年明けにかけてSuciuさんから直接
プレプリント
arXiv:1401.0868
の内容を聞く機会があって、超平面配置のミルナーファイバーの一次の
コホモロジーのモノドロミー固有空間分解を組合せ論的に統制しているのは、
どうも有限体係数の青本複体のコホモロジーらしいという
全体像が描けてきました。超平面配置が実構造を持つ場合に、
ミルナーファイバーのH^1のモノドロミー固有空間を記述する際に注目した
「共鳴バンド」なるものを使って青本複体のコホモロジーを計算する
方法を定式化しました。応用として証明した「実4ネットの非存在」は、
実は既に証明されていたことをプレプリントの公表後に知り、残念な
思いもしました。しかしこの論文で定式化したアルゴリズムから、
ミルナーファイバーのモノドロミー固有空間の存在が超平面配置に
様々な組合せ論的制約を課すことは明らかなので、実4ネットの非存在以外にも
色々な結果が得られることを期待しています。
[23]とあわせることで、ミルナーファイバーのモノドロミー固有空間と有限体係数の
青本複体のコホモロジーの並行した計算アルゴリズムが得られたことになるので、
組合せ論的決定可能性などの分析をする際に、この論文と[23]の比較をすることが
重要になると期待しています。
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[30]
(with H. Schenck,
H. Terao)
Logarithmic vector fields for quasihomogeneous curve configurations in P^2.
Math. Res. Letters 25 (2018) no. 6, 1977-1992.
(arXiv:1407.3237)
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2009年の
札幌の国際会議の際に
議論したのがほぼ唯一の貢献で(他に私がしたのは、最終版を雑誌のフォーマットの
合わせる作業くらい)、今となっては細かいことはいろいろよくわからなくなってます。
投稿は2013年、出版は2019年。とにかく時間がかかりました。
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[31]
Worpitzky partitions for root systems and characteristic quasi-polynomials.
Tohoku Math. J. 70 (2018) 39-63
(arXiv:1501.04955).
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『ルート系のリーマン予想』というPostnikovとStanleyの予想があります。
アフィンワイル群の(無限個の)鏡映面をあるやり方で有限で切って得られる
超平面配置(正確にはn>0を固定して、すべての正ルートの値を1~nまで動かして
得られる超平面を集めたもの(Linial配置))
を考えると、特性多項式の零点が実部一定の直線上にのるという予想です。
ABCDG型については2004年までに解かれています。EF型については未解決です。またリーマン予想から従う『関数等式』という予想もEF型については未解決でした。
今回、『ルート系のリーマン予想』が、E6,E7,F4については1/6解けました。
E8については1/30解けました。1/6とか1/30というのは、パラメタがn=-1 mod 6
とかmod 30 の場合だけ解けたからです。
『関数等式』についてはパラメタの条件なしに全てのルート系に関して
証明できました。
証明は特性多項式ではなく、その精密化である、格子点の数え上げに関連した
「特性準多項式」を考えます。考えたい領域の格子点の集合を、単体の和集合に
分割すると、特性準多項式は、基本アルコーブのEhrhart準多項式を使った
和で表されます(ここまでは既知の方針)。
難しいのは、格子点を重複なく数えるために、各単体の境界をどっちに入れて
数えるかというのを全体で整合的に行う部分でした。
境界を含んだり含まなかったりするので、
大きさの違う |W|/f 個の格子単体のたし上げをすることになります。
格子のサイズの分布が分かりませんでした。今回のポイントは、この単体の
サイズの分布がオイラー多項式を使って記述できるという点です。
ここで言うオイラー多項式というのは、Lam, Postnikov,
Alcoved polytopes II
(arXiv:1202.4015)
で扱われているもので、A型の場合にちょうど古典的なオイラー多項式になります。
ちなみに、(古典的な)オイラー多項式のコクセター群への一般化というのは他にもありますが、今回使うものは、Lam-Postnikov以外では見ていません。
オイラー多項式は係数が対称に並んでいるのですが(この事実はワイル群の最長元が正負のルートを入れ替える事実に基づく)、この対称性から『関数等式』が特性準多項式のレベルで成立していることが分かります。
A型格子に対して先の分割を考えると、古典的なオイラー多項式に関する非自明な関係式が出てくるな、と思って喜んでいたら、
「Worpitzkyの恒等式」
(1883)でした。
というわけで、一言でまとめると「Worpitzkyの恒等式を格子点の数え上げ公式と
解釈すると、ルート系に一般化できて、『ルート系のリーマン予想』の役に立つ」
というのが大まかな流れです。
オイラー多項式は元々オイラーがゼータ関数の負の整数での値を記述するのに導入したと言われています。ルート系の『リーマン予想』とか『関数等式』と呼ばれている主張にオイラー多項式の一般化が役立つことは、偶然かも知れませんが不思議です。
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[32]
Chromatic functors of graphs.
arXiv:1507.06587
(Jul. 24, 2015).
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2015年6月に広島大学で集中講義をすることになっており、直前の週に
例として紹介する予定のグラフの彩色多項式をどのように扱おうか、と
考えながらモチーフ理論のワークショップで木村俊一さんの講演を聴いた
直後に「グラフの彩色を『色の集合の圏』からの関手とみなそう」という
アイデアを得た。木村さんは「数えること」に関して、原始的なレベルで
強い興味を(多分)持っておられて、なおかつその興味を抽象的な
モチーフ理論に関する研究成果に昇華することができるという、
個人的にあこがれの研究者です。その影響を受けてささやかなものながら
論文を書くことができてうれしいです。集中講義で話すまでにできていたのは、
主結果だけで、CBS型定理は集中講義中にウソ証明を述べた後訂正したり、
無限 tree の直径に関する誤解を指摘されたり、と集中講義での
聴衆からたくさんのことを教わりました。北大に戻ってみると、
同僚の長谷部さんから強い興味を持って頂いて、潜在的に興味を
持って下さる人々がたくさんいるのではないかと期待しています。
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[33]
(with
P. Bailet)
Vanishing results for the Aomoto complex of real hyperplane
arrangements via minimality.
Journal of Singularities, vol. 14 (2016), 74-90.
(arXiv:1512.05318
(17 Dec. 2015).)
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極小性について既に10年近く研究していますが、初の高次元の局所系への応用。
(実超平面配置の)
青本複体のコホモロジーが、Cohen-Dimca-Orlikの結果に連動して消滅することを
証明。日本の外では「消滅」だけが重要視されていますが、青本先生や河野先生の
結果で主張されている「最高次のコホモロジーは有界chamberで生成される」という
部分はもっと注目してこだわるべきだと個人的には考えています。この論文で、
有界でないchamber達が、
無限遠平面をはさんで対消滅を起こし、
有界chamberだけが生き残るメカニズムが明らかになったと思います。
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[34]
(with
T. Hasebe and
T. Miyatani)
Euler characteristic reciprocity for chromatic, flow and order polynomials.
Journal of Singularities, vol. 16 (2017), 212-227.
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長谷部さんからあるとき、向きづけグラフに対して
長谷部さんらの論文
で定義された多項式が既存の不変量と関係ないか?と
いう質問を受けたのがきっかけで研究上の交流が始まりました。
長谷部さんの仕事を理解しようと議論しているうちに、
個人的に以前から持っていた妄想
「多面体上の格子点の数え上げに関するEhrhart相互律をオイラー標数的に
理解したい」を
順序多項式や彩色多項式で実現しようというアイデアがわいてきました。
結局、これらの数え上げ多項式に対する相互律が
空間のオイラー標数レベルで相互律が成り立っていることがわかりました。
途中から宮谷さんも加わって、向きづけられたグラフの流れ多項式に関しても
実現できました。
一番単純に記述できる、順序集合の部分について述べると、Stanley の相互律は、
ポセット間の狭義/広義単調増加写像の数え上げに関する相互律です。本論文で
実行したことは、数え上げ関数のある種の圏化といえると思います。
数え上げ関数の代わりに、半代数的順序集合を代入すると、狭義/広義単調増加写像
のなす「モジュライ空間」が出てきます。これまで数え上げ関数に負の数を代入すると
いう行為の意味はそれほど真面目に論じられていなかった気がしますが、我々の
枠組みでは単に「オイラー標数が負の空間を関手に代入」という形で自然に扱える
点を気に入っています。、
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[35]
Characteristic polynomials of Linial arrangements for exceptional root systems. Journal of Combinatorial Theory, Series A 157 (2018) 267-286.
(arXiv:1610.07841
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ルート系のm-Linial配置の零点が実部一定の直線上に並ぶ、という
Postnikov-Stanleyの予想について。ABCD型については、Athanasiadisが
既に証明済みで、残りはE6, E7, E8, F4のみ。これらのケースで、mが十分大の時は
予想が成立していることを示しました。すごく大雑把にある部分だけ抜き出すと
「とある多項式のすべての零点の実部が h/2 (hはCoxeter数)未満なら m が
十分大で予想が成立」というのが、定性的な結果です。証明には[31]の結果を
フルに使います。あとは例外型で「とある多項式」を
具体的に(計算機で)計算して、零点を(計算機で)近似計算しました。
E8型の場合は「14.66<h/2=15」という不等式のおかげで救われた、という感じで、
零点が実部一定の直線上に並ぶのは『たまたまそうなっているだけ』と感じています。
予想の検証のためには残り有限個を調べれば済むのですが、そのための
「mの大きさに関する評価は?」というのはいろいろな人(やレフリー)から聞かれる
のですが、あまり考えていません(それを真面目に考えるよりは、もっとまじめに
計算機を使って直接証明を考えるほうが良い気がします。)
2015年2月にはすでにできていたつもりなのですが、論文としてまとめるのに
時間がかかりました。
できたのは1年半後にドイツに長期出張に行ってからでした。
Postnikov-Stanleyの予想については、2020年12月に
田村繁太郎さんが完全に解決しました
(arXiv:2012.05634) 。
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[36]
(with Kazuki Iijima, Kyouhei Sasaki, and Yuuki Takahashi)
Eulerian polynomials and polynomial congruences.
Contributions to Discrete Mathematics, vol 14 (2019) 46-54
arXiv:1611.10147.
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[31]でA型ルート系のLinial配置の特性多項式をオイラー多項式を使って表示する
公式が得られたのですが、その表示と既知の Postnikov-Stanley, Athanasiadis の
表示とあまりにも違って、同じものを表示しているとはとても思えない、という
観察が出発点でした。特性多項式の二つの表示が同じものを表すためには、
オイラー多項式がある合同式を満たさなければならない、という論証で
「合同式」の証明が[31]では得られていました。
しかしオイラー多項式の初等的な性質なので、初等的な証明がつけられるはずだ、
という
ことでその証明をみつけたのが飯嶋さんの修論です。逆にその合同式を満たす多項式が
オイラー多項式しかないことを証明したのが、高橋さんの修論になりました。
飯嶋さん、高橋さんの修論の準備の議論に、準多項式を専門に扱っていた立場から
加わっていた佐々木さんも含めてまとめたのがこの論文です。
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[37]
(with P. Bailet, and
A. Dimca)
A vanishing result for the first twisted cohomology of affine varieties and applications to line arrangements.
manuscripta mathematica 157 (2018), no. 3-4, 497-511.
(arXiv:1705.06022).
-
Dimcaさんとは何年も前から、ねじれコホモロジーの消滅定理でなにかしようと
相談していたのですが、ようやく実現しました。BremenでBailetさんと
Cohen-Dimca-Orlikの消滅定理の証明を詳しく見直しているときに、とにかく
ある種の因子がampleになっていれば証明が走ることに気づき、
Nakai-Moishezonの判定法で、ampleになるケースをしらみつぶしに探す、
というのが方針です。1次のコホモロジーの消滅に限れば、Cohen-Dimca-Orlikを
かなり拡張できたと思います。
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[38]
(with Ye Liu and Tan Nhat Tran)
G-Tutte polynomials and abelian Lie group arrangements.
IMRN,
Vol. 2021, No. 1, pp. 152-190.
https://doi.org/10.1093/imrn/rnz092,
arXiv:1707.04551.
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Bremenへの長期出張に入ったころ、Delucchiさんから、特性準多項式と
算術Tutte多項式が関係しているかもしれない、というobservationを
教えてもらいました。同じころ、
Ye Liu さんと Tan Nhat Tran さんも(札幌で)
算術Tutte多項式の勉強をして、Ardila他の
計算結果から同じことを観察しており、しばらくして、彼らから証明が
送られてきました。その証明を精査しているうちに、Moci等の算術Tutte多項式の
定義の中で有限アーベル群の位数を数えている部分について、
実はそのPontrjagin双対(S^1への準同型全体)を数えているとみなす方が自然
である(個数は変わらない)ということに気づきました。
単純なアイデアですが、S^1の代わりに可換リー群Gを使うことで、
これまで別々に研究されてきた「Tutte多項式の一般化」が統一的に扱えることが
分かりました。(Gを自明群にすると古典的なTutte多項式、S^1にすれば算術Tutte、
有限巡回群にすれば、特性準多項式を特殊化に持つTutte多項式など)。
超平面配置の理論で、RやCの非コンパクト性が本質的に効いていることが
理解できたのは、小さいながらもうれしい発見でした。
(超平面配置や部分空間配置の補集合のオイラー標数やポアンカレ多項式をTutte多項式
の特殊化としてあらわす公式が知られています。オイラー標数に関しては、G-Tutte
多項式を使って、そのまますべての可換リー群に一般化できますが、ポアンカレ
多項式に関しては、リー群Gの非コンパクト性が必要になります。基本類が、
ベッチ数の表示の「障害」になってしまいます。)
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[39]
(with Ryuki Kaneta)
Magnitude homology of metric spaces and order complexes.
Bull. of London Math. Soc. vol. 53 (2021) 893-905.
arXiv:1803.04247.
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オイラー標数の一般化として、Leinster が導入した(距離空間の)Magnitude は
数年前から興味を持っていました。2017年11月に Leinster-Shulman の magnitude
homology のプレプリントがでたので、学生の金田さんと、これについて考えてみよう、
ということになりました。色々な例を見ているうちに、距離空間の二点 a, b の
「間の点たち」、つまり d(a, x)+d(x, b)=d(a, b) を満たす点 x 全体の集合に
自然に順序を入れると、その順序複体のホモロジーが magnitude homology と
密接にかかわることがわかりました。LS 論文で「magnitude homology が
torsion を持つことはあるか?」という問題が未解決問題として挙げられていましたが、
我々の視点からは「homology が torsion を持つ多様体の三角形分割の face poset の
Hasse diagram のグラフを距離空間とみなすと、
magnitude homology が torsion を持つ」ことが直ちにわかります。
分かってしまえば自然な視点で、レフリーからも
「なぜ誰もこれを思いつかなかったのか不思議だ」とコメントされました。
論文自体は、査読に1年、revise 後の査読にさらに1年、と出版まで
時間がかかりましたが、
この間、プレプリントをきっかけに、国内外の様々な
研究者との付き合いを新たに持つことができました。
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[40]
(with Tan Nhat Tran)
Combinatorics of certain abelian Lie group arrangements and chromatic quasi-polynomials.
Journal of Combinatorial Theory, Series A 165 (2019) 258-272.,
arXiv:1805.03365.
-
整数係数の一次式で定義された超平面配置を、mod n して補集合の点を数えたものを
n の関数とみなしたものを、特性準多項式といいます。これはある種の有限個の
多項式(成分)の「リスト」とも言えます。それらのうち、"prime" と呼ばれる成分は
特性多項式になることが古くから知られ、"最も退化した成分" と呼ばれるものが、
トーラス配置の特性多項式になることが[38]のG-Tutte多項式の一般論からわかって
いました。では他の成分として現れる多項式は特別な意味はないのか?というのが
モチベーションでしたが、この論文で、トーラス配置から定まる交差半順序集合で、
特定の torsion point を含む共通部分だけを取って得られる subposet の特性多項式
になっていることがわかりました。これで特性準多項式のすべての成分が、
自然なポセットの特性多項式になっていることが分かったといえます。
ここ数年「特性準多項式」にこだわっていますが、この論文で特性準多項式の一般論に
関しては以前よりもかなり理解が進んだと感じています。
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[41]
(with
Takuro Abe, Gerhard Rohrle, Christian Stump)
A Hodge filtration of logarithmic vector fields for well-generated complex reflection groups.
arXiv:1809.05026
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-
[42]
Double coverings of arrangement complements and 2-torsion in Milnor
fiber homology.
European Journal of Mathematics 6 (2020) 1097-1109
arXiv:1902.06256
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Stefan Papadimaさんの
追悼記念論文集を出すから何か書くように
との依頼を受けたものの、締め切りが3か月後に迫ってもネタがなくて焦ったまま
(2018年12月の)冬休みに入りました。数年前、トリエリさんと[29]を書いた後、
Papadima-Suciuの予想の証明や、H_1のtorsion freenessなど色々試みるも
ことごとく頓挫して、しばらくその方面では何もしていなかったのですが、
とりあえず「実超平面配置の複素化のミルナーファイバーのH_1は(-1)を
モノドロミー固有値に持たない」という事実の証明にターゲットを絞って
考え始めました。証明方針は「実超平面配置の
F_2係数青本複体の1次のコホモロジーの消滅を示して、あとは既存の知識で
なんとかする」というものでした。
F_2係数の青本複体のコホモロジーは知られている例ですべて消えていたので、
何とか示せるだろうと軽い気持ちだったのですが、いくら考えても
示せず、反例の候補を徹底的につぶそうと躍起になってひたすら反例の候補を
探し始めたときにたまたま描いたのが、プレプリント (PDF) の9ページの三重の5角形の図です([29]で証明していた
「もし反例があったら、、、」という結果が反例の探索に役立ちました)。
すぐにF_2係数の青本複体の1次のコホモロジーが1次元あることが見て取れました。
これは証明したかったことの反例なので
残念でしたが、[23]を書いて以来習慣となっている「おもしろそうな直線配置
をみたらミルナーファイバーのコホモロジーのモノドロミー固有分解を求める」を
実行してみて、これが Papadima-Suciu の予想の反例になっていることが
分かりました。
PS予想の反例になっている理由を深く考えていた際に、
ホモロジーのねじれが関係しているのではないかという予感があり、
Hausmannという人の本で mod 2 ホモロジーの勉強をしながら調べ始めました。
平面の枚数(=16)が2冪であるおかげで transfer 完全列を
繰り返し使えるという奇跡的な理由で、ミルナーファイバーの mod 2 ベッチ数の
下限が計算でき、H_1 が 2-torsion を持つことがわかりました。
ミルナーファイバーの1次のホモロジーがねじれを持つ例も、15年以上さがし
求められていたものでした。
ついでに、この配置を三次元空間で実現すると、
20・12面体(Icosidodecahedron)という多面体と深く関係していることがわかり、
この配置を Icosidodecahedral arrangement と名付けました。
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[43]
(with Ahmed Umer Ashraf, Tan Nhat Tran)
Eulerian polynomials for subarrangements of Weyl arrangements.
Adv. in Applied Math. 120 (2020) 102064.
arXiv:1911.01650
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Ashrafさんが3か月札幌に滞在している間、Tranさんと3人で
色々なことを議論して、Weyl配置のオイラー多項式をWeyl配置の部分配置に
一般化しました。
ただプレプリントの version 1 には
ミスがあり、土谷さんからの「計算が合わない」との指摘を精査している中で
主結果の証明のためには、"compatible"という条件が必要であることが
分かりました。このため、一部の結果を追加の仮定付きのものに変更せざるを
得なくなりました。Revise 中にルート系の「イデアル」と呼ばれる
部分集合が compatible であることの証明が完成し、事なきを得たといった
所です。ルート系の「イデアル」の自由性および特性多項式に関する
Abe-Barakat-Cuntz-Hoge-Terao の有名な結果を特性準多項式の
立場から精密化したいということを数年前から考えているのですが、ようやく
一歩踏み出せたと感じています。
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[44]
(with Kentaro Akasaka, Suguru Ishibashi)
Finite record sets of chip-firing games.
to appear in
Innovations in Incidence Geometry - Algebraic, Topological and Combinatorial
(arXiv:2005.00822)
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赤坂さんは大学院の途中で私のところへ移ってきました。グラフ理論に関係したことをやりたいということで、
chip-firing game で何かできないか相談を始めました。chip-firing game とは、有限グラフの頂点に
チップ(お金)を置いて、"fire" という操作を繰り返すゲームです(実際に勝ち負けを決めるゲームというよりは、
ルール上許された操作 "fire" をひとりで続けていくだけのものです)。
"fire" とはある頂点にあるお金を、辺に沿って1円ずつ隣の頂点に移す操作です。お金か頂点の次数未満なら
"fire" できません。"fire" できる頂点がなくなったらゲーム終了なのですが、ゲームが
有限ステップで終わるかどうかは、初期状態だけで決まることが知られています(自明ではありません)。つまり、
初期状態によって、どんなにうまく操作を繰り返しても、有限回で "fire" できなくなるか、どんなに下手に
操作を繰り返しても永遠に "fire" し続けられるかのどちらか
であることが知られています。可能な操作の手順の集合は、初期配置から
決まる(頂点の)語の集合となります。
Chip-firing game に関して赤坂さんに読んで発表してもらったいくつかの論文のうち、
組合せ論やトポロジーで有名なビョルナー、
量子コンピュータのアルゴリズムで有名なショア、京都賞・アーベル賞受賞者のロヴァース
の3人の共著論文で chip-firing game から決まる語の集合に関する性質を調べているのを参考に、
新しい性質がないかを調べ始めました。我々の論文で abb-property と呼んでいる
性質を赤坂さんが見つけ、そこからセミナーに参加していた石橋さんも一緒に、chip-firing game から
決まる語の集合の「特徴づけ」を目指した議論を始めました。"fire" する頂点が2頂点に限られている、
という特殊な設定ですが、chip-firing game から得られる語の集合の特徴づけが得られました。
離散的な意味での「凸性」と関係しているのだろうという気はしているのですが、まだそこまで手がまわっていません。
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[45]
(with Daisuke Suyama)
The primitive derivation and discrete integrals.
SIGMA 17 (2021), 038, 9 pages,
arXiv:2009.13710
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数年前にM. Feigin氏からBandlow-Musikerの quasi-invariant の積分表示が、
実質的にA型の多重配置の対数的ベクトル場の基底を与えている、ということを
教えてもらって以来、これをうまく使って、Catalan配置の対数的ベクトル場
の基底を作れないか?というのが気になっていました(Catalan配置の基底の
主要項が Bandlow-Musiker の積分表示になるはずであることはわかっていました)。
2017年の秋にBremen出張中に、Catalan配置の基底が満たすべき性質とBMの積分表示
の関係を考察している際に、ある種の「差分的操作」との相性の良さが
観察でき、しばらく考えて「Catalan配置の基底はBMの積分表示の『離散積分版』と解釈できる」
ことがわかりました。1996年のEdelman-Reinerの論文で、基底の存在は
知られていましたが、ようやくその「表示」が得られました。
その後、陶山さんがShi配置の場合の表示も見つけ、共著論文にしました。
先行研究で、陶山さんと寺尾先生がA型Shi配置の一番簡単なパラメータの
場合に Bernoulli 多項式を使った表示を得ていて、当時「なぜか Bernoulli
多項式を使うと表示できる(理由はよくわからない)」というのが個人的な
印象でしたが、今回、少なくとも個人的には納得のいく理由が得られました
(単項式 x^n の離散不定積分がBernoulli多項式なので、離散積分表示を
他の既存の言葉で書き下そうとすると、Bernoulli多項式が必要になる)。
まだA型でしかできていませんので、他のルート系では challenging な問題として
残っています。A型に関しては、斎藤恭司先生の原始微分の逆作用素(原始積分)の
離散化をしたことになります。斎藤先生の77歳記念論文集で発表しました。
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[46]
(with M. Tsukamoto, M. Tsutaya)
$G$-index, topological dynamics and marker property.
to appear in Israel Journal of Mathematics.
(arXiv:2012.15372)
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ある時、塚本さんから超平面配置に関係した力学系の問題に関する問い合わせがあり、
共同研究が始まりました。大まかには、Zが作用している空間に対して
「できるだけ小さい開集合Uで、群作用でもなかなか重ならないが、
実際は和集合が全体を覆うようなものを探せ」というタイプの問題でした。
「群作用でなかなか重ならない」という部分を適切に定式化すると、
高次元の cube 内の
部分空間配置の r-近傍の補集合のホモロジーがどこまで消えないか、という
問題と関係しているとのことでした。単なる「部分空間配置の補集合」であれば、
色々計算手法はありますが、r-近傍の補集合となると、全く直感が働きません。
「r-近傍を避けられるかどうか判断できるくらい、明示的なサイクルを
できるだけ高い次元で作ってほしい」というのが注文でした。
問題周辺のことを塚本さんと蔦谷さんから色々教わりながら、
数週間集中的に考え続けました。
当時、超平面配置の K(π, 1)-性について何かできないか考えており、その文脈で
generic 配置の補集合のホモトピー群の非自明な元の構成を得ていました。
同じ方法が塚本さんの問題にもピッタリ使えることがわかり、試してみましたが、
残念ながら、この方法で構成できるサイクルは、期待される次数にははるかに
及ばないことがわかりました。塚本さんに話すと、(「目の覚めるような構成」と
ほめては頂いたものの)私が「これ以上は難しい」と
感じた以上に本質的な壁が明確に見えた様子でした。その後、塚本さんの新しい
方針で、懸案だった性質を持つ力学系の構成がなされました。
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[47]
(with T. Yoshida)
What is $-Q$ for a poset $Q$?
to appear in Order.
(arXiv:2102.00566)
-
長谷部さん等と書いた論文[34]で、ポセットの順序多項式に関する組み合わせ論的
相互律のオイラー標数を使った定式化を与えました。大まかには、半代数的に
定義されるポセット Q に対して、-Q の定義を与え、有限ポセット P から ±Q への
ポセットの射の空間のオイラー標数が等しいという形で相互律の幾何学的定式化を
与えました。-(-Q)≠Q であることから、二種類の異なる等式が得られていました。
そのうち片方については、両辺の空間の連結成分数が異なるなど、同相になる
可能性はなかったのですが、もう一方についてはオイラー標数が等しいだけでなく、
空間のレベルで同相であることを証明しました。
個人的にこの論文で気に入っている点は、
「距離化可能空間上の上半連続関数に対して、上から単調に
収束する連続関数の可算列が取れる」という事実を使ったことです
(Bourbaki, General Topology には載っており、Wikipedia の
"Semi-continuity"
(英語)には紹介されていますが、(ブルバキの日本語訳以外で)
日本語でこの事実を扱った文献はまだ見ていません。
すごく有名というわけではない古典的な結果のようです)。
ごく簡単な例で、こういう
タイプの事実が使えるかもしれない、という観察をしていたのですが、
吉田さんが有限ポセットPの複雑さに関する巧みな帰納法を考案してくれて、
証明が完成しました。というわけで現時点では「同相写像」は自然なものでもなく、
それどころか半代数的な写像ですらない超越的な写像です。おそらく半代数的な
写像の範囲でも同相写像が作れると思うのですが、まだ成功していません。
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[48]
(with Sakumi Sugawara)
Divides with cusps and Kirby diagrams for line arrangements.
Topology and its Applications 313 (2022), Paper No. 107989.
(arXiv:2103.15262)
-
複素化直線配置の補集合の微分位相型を記述するハンドル分解を
記述したい、というのは[5]を書いて以降、ずっと気になっていましたが
ついに実現しました。論文前半の区分線形なハンドル分解は比較的
すぐにできたのですが、そのまま Kirby 図式を書こうとすると(当事者にしか
わからない)複雑な記述になるので、できるだけ単純な記述、具体的には、
A'Campo の divide のように、純粋に平面図で
表示することを目指しました。Kirby図式の「点付き円」が
「(元の実直線配置の)直線と、(divide を考えている)円板との交線として表される」
というところまでは良かったのですが、2-ハンドルの張り付き方を指定する
リンクが難問でした。ひたすら(菅原さんが)Kirby図式を描いているうちに、
普通の divide から定まるリンクにはなっていなさそうだが、
ところどころに half-twist を入れることができればOK、
ということがわかりました。Divide にカスプを許せば、
half-twist が実現できることがわかり、「カスプ付き divide を使った
Kirby 図式表示」が完成しました。
ちなみに雑誌「現代数学」の記事『輝数遇数』の取材を受けて、
現代数学 2021年1月号に
載った写真の一つはこの論文の準備中のセミナー風景写真です。
生まれたての「カスプ付き divide 」について議論しているところです。
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[49]
(with Kyosuke Higashida)
Feynman graphs and Hyperplane arrangements defined over $\mathbb{F}_1$.
Journal of Geometry and Physics 170, (2021) 104368
arXiv:2103.15661
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F_1 構造は以前から気になっていました。特に、Bejleri-Marcolli
"Quantum field theory over F_1" は、超平面配置関係の問題も論じられていて
そのうち何かしたいと、数年前から考えていました。最初にこの論文を研究テーマに
すすめたのは、数年前にポスドクだったPさんでした。
その時は、Pさんの札幌滞在期限も迫っており、
実質的には何もできませんでしたが、次のポスドク先から
「Conjecture 3.6 の反例を得た」という成果を知らせていただきました。
2020年度卒業研究を担当をしていた東田さんと、
この論文の Question 5.3 "超平面配置補集合がF_1構造を持つのはいつか?"に焦点をあてて議論を始めました。BM論文の内容と超平面配置
の一般的知識から、
(a) 超平面配置 A が Boolean
⇒
(b) A の補集合 M(A) が F_1 構造を持つ
⇒
(c) 特性多項式 χ(A, t) の t=1 でのテイラー係数が非負
という論理関係は明らかでした。このうち(a)と(c)は純粋に超平面配置の
組み合わせ論的性質なので、「(c)⇒(a) を頑張って証明しましょう」
というのが私の戦略でした。ところがある朝起きると「(c)⇒(a)の反例がありました」
というメールが来ていて、目が覚めました。
考えるべきは(b)⇒(a)だと気づき、その後は比較的短時間で
できた気がします。
-
[50]
(with Akihiro Higashitani, Tan Nhat Tran)
Period collapse in characteristic quasi-polynomials of hyperplane
arrangements.
IMRN Volume 2023, Issue 10, May 2023, Pages 8934-8963
(arXiv:2105.02367)
-
有理多面体を n 倍して格子点を数える関数はEhrhart準多項式と呼ばれます。
準多項式は、多項式の係数が周期的にふるまう多項式です。
有理多面体のEhrhart準多項式には、「頂点の座標の分母から予想される周期」が
ありますが、実際の周期は「予想される周期」より小さくなることが
あります。この現象は、"period collapse" とよばれ、最近興味を集めています。
アフィン超平面配置の特性準多項式の period collapse 現象について東谷さんと
Tranさんが調べたプレプリントを発表したのを見た際に、紙屋-竹村-寺尾による
特性準多項式の導入以来懸案だった「中心的超平面配置の特性準多項式の
周期は『自然に予期される周期』に一致」という主張の証明に肉薄しているのを
感じたので、その旨をメールで知らせて議論を始めたらあっさりと証明
できたので、version 2 から著者に加えていただきました。
最近、Ehrhart理論と超平面配置の特性準多項式の関係が盛り上がってきています
(e.g.
RIMS研究集会)。
Ehrhart理論は私にとって「真面目に勉強していれば確実に夢中になったテーマ」
なのですが、そのきっかけを得たのは比較的遅く、2013年の
イタリアのCortonaでの研究集会
の休み時間に参加者の村井さんから教わった時でした。この一年後に、
Postnikov-Stanley による Linial 配置の特性多項式の零点分布に関する予想の
研究のために Beck-Robins を読んで
まじめに勉強しました([31]と[35]を書いたいきさつを
数学セミナー(2017年7月号)
で紹介しました)。研究の幅がひろがりました。
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[51]
(with Christopher de Vries)
Ehrhart quasi-polynomials of almost integral polytopes.
to appear in
Discrete and Computational Geometry,
arXiv:2108.11132
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純粋に多面体論の論文です。
[31] を書いていたころ(2015年頃)、ルート系の基本アルコーブと呼ばれる有理単体の
Ehrhart準多項式が GCD 性を持っていることに気づき、「GCD性をもつ多面体は面白いに違いない」という
問題意識を持ちました。上の例以外にあるか?というのが最初の問題でしたが、
しばらく実験などして、2017年頃には、「平行移動した格子ゾノトープ」という大きなクラス(この時点では候補)を
見つけており、2018年のOberwolfachのミーティングの際に、problem session で述べています。
しばらく後に、de Vries さんが北大-Bremen大学間のコチュテル(共同指導)制度で、札幌に一年滞在する
ことになり、多面体のGCD性でもやるか、という話になりました。当初2020年4月来日予定だったのが、コロナで延期になり、
Zoomでの議論を始めました。幸か不幸か、その間にでたプレプリント
(arXiv:2004.02952)
にある公式から、当初目標にしていた問題「平行移動した格子ゾノトープがGCD性を持つ」が
直ちに得られることがわかり、その先を目指すことになりました。たくさん実験しているうちに、
ある種の「逆」が成立しているのではないか、という感触が得られ、その方向での研究を始めました。
2020年12月には無事来日することができ、その後は順調に研究が進み、格子多面体が
「中心対称である」、「ゾノトープである」などの性質が、平行移動のEhrhart準多項式で特徴づけられる
ことがわかりました。
なにか応用があったりするわけでは(今のところ)ありませんが、GCD性や、準多項式の構成素の対称性、という
これまであまり注目されてこなかった性質が多面体の形状と密接にかかわっていることは、面白い事実だと思います。
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[52]
(with Yu Tajima)
Magnitude homology of graphs and discrete Morse theory on Asao-Izumihara complexes.
Homology, Homotopy and Applications 25 (2023) no. 1, 331-343
(arXiv:2110.02458)
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ビッグデータのクラスタリングなどと関係すると期待される概念として、
距離空間の不変量「マグニチュード」がLeinsterにより導入され、
その圏化のマグニチュードホモロジーも最近研究が始まりました。グラフの
マグニチュードホモロジーは、パスの長さ ℓ とホモロジーの次数 k の二つの
パラメータがあるのですが、ℓ≠k の時にホモロジーが消えるグラフは
対角的なグラフと呼ばれます。
対角的なグラフは、単にマグニチュードホモロジーの構造が単純であるのみならず、
マグニチュードホモロジー(のランク)とマグニチュードが同等な情報を持つため、
特に重要なクラスト考えられています。
数年前に Asao-Izumihara により、グラフと正整数 ℓ から定まる
ある種のCW複体で、そのホモロジーが
マグニチュードホモロジーと同型になるものが構成されました。対角性は、
Asao-Izumihara複体の被約ホモロジーが一つの次数に集中することと同値です。
となると、対角的なグラフのAsao-Izumihara複体が球面の一点和とホモトピー同値か
どうかが自然な問題となります。この論文では、"Pawful graph" とよばれる
「対角性が示されているグラフのクラス」に対して、Asao-Izumihara複体が
球面の一点和とホモトピー同値に
なることを証明しました。証明は離散モース理論を使います。
最初のころ、サイクルグラフC_4あたりで色々実験しているうちは、
少し工夫をすればすぐに離散モース理論を使うのに必要な
acyclic matchingが作れたのですが、一般の
Pawful graphに対しては、田嶌さんがかなり非自明な acyclic matching の
構成法を見つけてくれました。さらに
「Pawfulではないが、今回の acyclic matching の構成法で対角性を示せる例」、
「これまで知られていた対角性の必要条件内での非対角的な例」
の発見など、徹底的な研究は田嶌さんによるものです(これらの例は、
後続の研究
(arXiv:2201.08047)
においても重要な役割を果たしました)。
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[53]
(with
Takuro Abe,
Naoya Enomoto,
and
Misha Feigin)
Free reflection multiarrangements and quasi-invariants.
arXiv:2112.06738
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[54]
(with Suguru Ishibashi,
and
Sakumi Sugawara)
Betti numbers and torsions in homology groups of double coverings.
to appear in Advances in Applied Mathematics
arXiv:2209.02236
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超平面配置のミルナーファイバーは、射影化した超平面配置補集合の巡回被覆になっていますが、
[42] を書いて以降、まずは超平面配置の補集合の二重被覆をよく理解しないことには先に進めない
気がしてきました。超平面配置補集合上の二重被覆と球面束をテーマとしていた石橋さんと、
菅原さんとそのあたりの議論を進めました。二重被覆のレベルでは、「Papadima-Suciu による
1次のベッチ数の予想公式のずれ」と2-torsion part のランクが一致することがわかりました。
20-12面体配置において、
「Papadima-Suciu によるミルナーファイバーの一次のベッチ数を予想する公式の反例」
と「ミルナーファイバーの一次のホモロジーがねじれ」が同時に達成されたことには
理由があったということになります。
上の結果の帰結として、超平面配置(偶数枚)のミルナーファイバーのベッチ数を確定するには、二重被覆の
ホモロジーのねじれの理解が不可欠であることもわかり、以前よりも問題の難しさが感じられるようになりました。
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[55]
(with Yu Tajima)
Causal order complex and magnitude homotopy type of metric spaces.
IMRN (2023)
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「グラフのマグニチュードホモロジーがグラフの Whitney twist という操作で不変か?」という未解決問題を目標に研究を始めました。
Whitney twist で magnitude が不変であることは、Leinster さんが証明していましたが、magnitude homology のレベルで
一致するかどうかは未解決です。現時点で反例は見つかっていません。
前の論文([52])で、magnitude homology の研究に離散モース理論をうまく応用できたので、この方向を発展させるというのが基本方針で、
色々な問題を考え続けました。例えば、先行研究で証明されていた Mayer-Vietoris 型定理については、田嶌さんが見つけた
acyclic matching により、離散モース理論的枠組みで非常に見通しよくできる証明できることがわかりました。Whitney twist に
ついては、さらに一般的な twist を考えることが自然であろう、という考えに2022年8月ごろに到達したのですが、それについては Emily Roff さんの
博士論文ですでに定式化されていることを9月に知りました。
2022年11月に岡山大学で magnitude homology に関する集中講義をする機会をいただきました。
ホストは北大に勤めていた際の同僚の秦泉寺先生でした。北大時代に秦泉寺先生から、
「数学的な視点」と並行して、「場の理論的な視点」というものがあるらしいということを
折に触れて教えてもらっていたので、個人的なお返しのつもりもあり、
集中講義では magnitude の経路和(積分)的な側面を強調する
作戦にでました。それが良かったのかどうかわかりませんが、秦泉寺先生や他の聴衆から刺激的な
質問やコメントをたくさんいただきました。
集中講義期間中に議論していて、グラフの Asao-Izumihara 複体を距離空間に一般化するアイデアが
得られました。その後1カ月くらいの間に、
「距離空間上の時空において光速以下で伝わる因果関係から定まる順序集合」の
順序複体とその部分複体の対という形で空間の定式化ができました。
この空間(対)のホモロジー群が magnitude homology と同型になるので、この空間対を
"magnitude homotopy type" と呼ぶことにしました。
この空間の定式化の意義、先行研究との違いについては書いておきたいことが色々あるのですが、長くなりそうなので
省略(そのうち書くかもしれません)。
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[56]
(with Akihiro Higashitani and Satoshi Murai)
Ehrhart quasi-polynomials and parallel translations. arXiv:2307.08151
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[57]
(with Misha Feigin and Zixuan Wang)
Integral expressions for derivations of multiarrangements.
arXiv:2309.01287
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[58]
(with Emily Roff)
The small-scale limit of magnitude and the one-point property
arXiv:2312.14497
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[59]
q-deformation of Aomoto complex.
to appear in Revue Roumaine de Mathematiques Pures et Appliquees
arXiv:2401.00810
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複体の「q-変形」という概念が一般に研究されているのかわかりませんが、ここではとりあえず、
アーベル群の複体の(余)境界写像を適当な基底に関して行列表示して、各成分をq-整数で置き換える、
という操作です。これは基底に依存した概念であり、その上、普通は「q-変形」すると複体ですら
なくなります。基底の取り換えによって、たまたま「q-変形」が複体になってくれても、
それが何を意味するのかは一般には明らかではないように思われます。
この論文では、青本複体を、Chamber から決まる基底を使って記述しておけば、上の「q-変形」が
可能で、しかもqに複素数を代入することで、局所系係数コホモロジーの計算をしてくれる複体が
得られる、というものです。
特に q に 1 の冪根を代入すると、巡回被覆のホモロジーのモノドロミー固有空間が
計算できます。
結果自体はかなり前から知っていて、何度か講演はしてきました(最古の記録は2013年のピサ大学のセミナー)が、
そのうち論文化しようと後回しにしていたら10年以上たってしまいました。
「q-変形が再び複体になる」というのは、q-整数の間の非自明な二次の関係式を要請します。
そのような関係式は、量子群 Uq(sl2) のテンソル積表現の既約分解に関する Clebsch-Gordan 則から
得られます。一方、青本複体の、chamber 基底に関する表示は、各 Chamber ごとに臨界点があるような
モース関数のモース複体から得られると考えることができます。幾何学的な見方と、Uq(sl2) の
表現をつなげる何かがあるのではないかと以前から期待しているのですが、まだわかりません。
「q-変形+1の冪根を代入」という操作は cyclic sieving phenomena など組合せ論でも面白い現象が
あります。「q-変形+1の冪根を代入」という操作についてよりよく理解したいです。
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[60]
A construction of homotopically non-trivial embedded spheres for hyperplane arrangements.
arXiv:2405.20010
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[61]
Topology of hyperplane arrangements via real structure.
arXiv:2408.02038
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[62]
(with Ryo Uchiumi)
The quasi-polynomiality of mod q permutation representation for a linear finite group action on a lattice.
arXiv:2409.01084
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[63]
(with Yasuhiko Asao,
Yu Tajima)
Magnitude homology and homotopy type of metric fibrations.
arXiv:2409.03278
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つづく(予定)