行列の計算例題(逆行列)

          


例題:次の行列の逆行列を求めよ。

\[ \left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}{-}2 & {-}1 & 0 & {-}1 & 1 \\ 2 & 2 & 2 & 0 & 1 \\ 2 & 1 & 2 & 1 & {-}1 \\ {-}2 & 1 & {-}1 & {-}2 & {-}2 \\ 0 & 1 & {-}2 & {-}1 & 1\end{array}\right] \]

解答

簡約化における変換行列を求める方法と同じである。行列 \(A\) に基本変形を行って簡約行列 \(B\) が得られたなら、ある正則行列 \(C\) で \(CA=B\) と表される。\(A\) の右側に \(A\) の行数のサイズの単位行列を並べた行列 \((A\ E)\) に行基本変形を行い、\(A\) の部分を簡約化する。ところで、逆行列をもつ正則行列は簡約化が単位行列なので、\(A\ E\) の簡約化は \(E\ X\) となり、\(A\) を簡約化する正則行列を \(C\) とおくと \(C(A\ E)=(E\ X)\) である。従って、\(CA=E\), \(CE=X\) なので、\(X\) が\(A\) の逆行列である。ところで、\(A\ E\) の簡約化の右側が単位行列でないとき、\(A\) が正則でないので、\(A\) は逆行列を持たない。つまり、\(A\ E\) の簡約化を計算することで、正則であるかどうかを判別し、正則である場合に逆行列を求めることができる。 \[ \left[\begin{array}{rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}|wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}}{-}2 & {-}1 & 0 & {-}1 & 1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 2 & 2 & 2 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ 2 & 1 & 2 & 1 & {-}1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ {-}2 & 1 & {-}1 & {-}2 & {-}2 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & {-}2 & {-}1 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1\end{array}\right]\ \to\ \left[\begin{array}{rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}|wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}}1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 11/2 & {-}4 & 9 & {-}1 & 11/2 \\ 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & {-}11/2 & 4 & {-}17/2 & 1 & {-}5 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 1/2 & 0 & 1/2 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & {-}15/2 & 5 & {-}23/2 & 1 & {-}7 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 1 & {-}1 & 1 & {-}2 & 0 & {-}1\end{array}\right] \] 以上より、簡約行列は \(\left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 1\end{array}\right]\) で、簡約化を与える正則行列は \(\left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}11/2 & {-}4 & 9 & {-}1 & 11/2 \\ {-}11/2 & 4 & {-}17/2 & 1 & {-}5 \\ 1/2 & 0 & 1/2 & 0 & 0 \\ {-}15/2 & 5 & {-}23/2 & 1 & {-}7 \\ {-}1 & 1 & {-}2 & 0 & {-}1\end{array}\right]\) である。