行列の計算例題(部分空間)

          


例題:ベクトルの組で生成される部分空間を、ある線型写像の核として表せ。

\[ \left[\begin{array}{@{}r@{}}{-}1 \\ 0 \\ 2 \\ 1\end{array}\right], \quad \left[\begin{array}{@{}r@{}}{-}1 \\ 0 \\ {-}1 \\ 1\end{array}\right], \quad \left[\begin{array}{@{}r@{}}{-}1 \\ 1 \\ 4 \\ 2\end{array}\right], \quad \left[\begin{array}{@{}r@{}}0 \\ 0 \\ 2 \\ 0\end{array}\right], \quad \left[\begin{array}{@{}r@{}}0 \\ {-}1 \\ {-}3 \\ {-}1\end{array}\right] \]

解答

\[ A = \left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}{-}1 & {-}1 & {-}1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & {-}1 \\ 2 & {-}1 & 4 & 2 & {-}3 \\ 1 & 1 & 2 & 0 & {-}1\end{array}\right] \]

とおく。考えている部分空間は、\(A\) 倍写像の像である。\(\text{Im }A = \text{Ker }B\) を満たす行列 \(B\) を求めればよい。

 ・ \(A\) は (4, 5) 行列なので、\(B\) の列数は \(A\) の行数の 4 に等しい。

 ・ \(\text{dim(Im }A\text{)} = \text{rank }A\)、 \(\text{dim(Ker }B\text{)} = 4-\text{rank }B\) だから、\(\text{rank }B = 4-\text{rank }A\)

 ・ \(A\) 倍写像の像が \(B\) 倍で消える(零ベクトルになる)ので、\(BA=O\) が成り立つ。

 ・ 転置をとると、\({}^tA\,{}^tB=O\) なので、\(\text{Im }{}^tB\subset\text{Ker }{}^tA\) となる。

 ・ \(\text{dim(Im }{}^tB\text{)} = \text{rank }{}^tB = \text{rank }B = 4-\text{rank }A \)

 ・ \(\text{dim(Ker }{}^tA\text{)} = 4\text{(=\({}^tA\) の列数=\(A\) の行数)} -\text{rank }{}^tA = 4-\text{rank }A \)

従って、\(\text{dim(Im }{}^tB\text{)} = \text{dim(Ker }{}^tA\text{)}\) より \(\text{Im }{}^tB = \text{Ker }{}^tA\) である。斉次形連立一次方程式 \({}^tAx=0\) の解空間を求め、その生成元(基底)を並べることで \({}^tB\) が得られる。

\[ {}^tA = \left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}{-}1 & 0 & 2 & 1 \\ {-}1 & 0 & {-}1 & 1 \\ {-}1 & 1 & 4 & 2 \\ 0 & 0 & 2 & 0 \\ 0 & {-}1 & {-}3 & {-}1\end{array}\right] \to \left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}1 & 0 & 0 & {-}1 \\ 0 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0\end{array}\right] \]

\(\text{rank }A = 3 \) なので、\(\text{rank }B = 4- \text{rank }A = 1\) である。解空間 \(\text{Ker }{}^tA\) の基底をとれば、\(B\) としてサイズ (1, 4) の行列が得られる。\[ B = \left[\begin{array}{@{}rwr{20pt}wr{20pt}wr{20pt}@{}}1 & {-}1 & 0 & 1\end{array}\right] \]