平成27年度の記録
4月15日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 B 棟 342セミナー室,
時間:16:30ー18:00
講演者: 高橋野以氏(大阪大学大学院情報科学研究科)
非カオス的ストレンジアトラクターの劣指数的鋭敏性と
フラクタル構造の起源
準周期外力系には、ルベーグ測度が正のパラメータ領域で、
最大リャプノフ指数が非正のフラクタルアトラクターである
「非カオス的ストレンジアトラクター(SNA)」が現れる。
我々は主に準周期駆動された円写像に現れるSNAの統計的性質を
数値計算を用いて調べている。
SNAには劣指数的鋭敏性の指標として位相鋭敏性という
特性量がある。今回位相鋭性の統計的性質について調べ、
それがアトラクターと複雑に絡まっているリペラーの
振る舞いから説明できるという結果を得た。
次に位相鋭敏性はアトラクターの幾何学的性質を反映することを
踏まえ、位相鋭敏性の統計量と、粗視化した長さから得られる
フラクタル次元との関係を得た。これと上の結果を踏まえると、
アトラクターのフラクタル特性もリペラーの振る舞いから説明される。
今回の講演では以上のことについて、SNAの基本的事柄から説明する。
6月24日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505セミナー室,
時間:16:30ー18:00
講演者: 田中晴喜氏(和歌山県立医科大)
高次元空間上のグラフ共形反復関数系の漸近摂動
有限有向グラフの構造を備えた,
強分離条件を満たすR^D上の共形反復関数系の
漸近摂動を考える.もしDが3以上の場合,
反復関数系を決定するR^D上の領域で定義された
C^1-共形微分同相写像は,Liouvilleの定理より,
ある「標準形」をもつことが知られている.
本講演では,「標準形」を決定するパラメータが
漸近展開をもつとき,極限集合のHausdorff次元も
漸近展開をもつことを紹介したい.
また,グラフ反復関数系の退化漸近摂動に
関する結果も時間があれば述べたい.
7月15日(水) 場所: 豊中キャンパス 理学部 D 棟 505セミナー室,
時間:16:30ー18:00
講演者: 奥山裕介氏(京都工業繊維大学)
Quantitative approximations of Lyapunov exponents of
rational functions on the Berkovich projective line
in non-archimedean and complex dynamics
本講演では複素および非アルキメデス的
(特に数論的)力学系のBaker--Rumely, Chambert-Loir,
Favre--Rivera-Letelierらによってはじめられた
Berkovich射影直線上のポテンシャル論的研究を概説する
とともに、応用として有理関数の周期軌道の乗法因子による
(標準測度に関する)Lyapunov指数の定量的近似公式を解説する。
時間が許せば複素力学系のモヂュライへの近似公式の応用と
最近のGauthier--Vignyによるその精密化についても触れたい。
10月7日(水) 場所: 豊中キャンパス理学部棟5階D505 セミナー室,
時間: 16:30−18:00
講演者: 杉山登志氏(灘高校)
The moduli space of polynomial maps from the viewpoint of fixed-point
multipliers
複素1変数のd次多項式f(z)は複素平面からそれ自身への正則写像であるが,その固定
点におけるmultiplierたちがどのような値であるかは,f(z)の反復合成の性質を調べる複素力学
系において非常に重要である。
本講演では,d個の複素数を先に与えたときに,これらを固定点のmultiplierにもつ
ような
複素1変数d次多項式f(z)が,アファイン共役のレベルで何個あるのかを完全に調べる。
具体的には,任意に与えたd個の複素数の組に対して,{1,2,...,d}のべき集合の部分
集合I,Kを
定義し,求める個数がI,Kだけから(比較的長い手数を経て)完全に計算されること
を示す。
さらに,d次多項式のアファイン共役類に対して,その固定点のmultiplierたちから
なる集合を
対応させる写像を考えたとき,この写像の局所的なファイバー構造も,I,Kにより完
全に決定さ
れることを示す。
証明では,射影空間におけるベズーの定理を巧妙に拡張したものを用いる。
12月2日(水) 場所: 大阪大学吹田キャンパス情報科学研究科C棟201,
時間:17:00−18:30
(いつもと時間帯、場所が異なります。ご注意ください。)
講演者:下村健吾氏(大阪大学大学院情報科学研究科情報基礎数学専攻)
反復関数系の極限集合の重複度別のハウスドルフ次元について
反復関数系の極限集合のHausdorff次元に関しては
開集合条件のもとで研究が進んでいる。
本講演ではその開集合条件を仮定せずに
極限集合がCantor集合となるような反復関数系を構成し、
その縮小率を変化させ重複させるようにする。
極限集合はそのとき線分となり
Hausdorff次元は1となるが
その線分を重複度ごとに分けた集合に対して
今回は特定の値に対して
Hausdorff次元が求めることができたので
その結果を紹介する。
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