Grothendieck圏とは,生成子を持つ余完備なアーベル圏であって,フィルター余極限を取る関手が完全関手になっているような圏のことである.環上の加群の圏やスキーム上の準連接層の圏などがその例である.Grothendieck圏はアーベル圏の中でも特に良い性質を持つことで知られ,injective cogeneratorおよびinjective resolutionの存在や随伴関手定理・関手の表現定理が成り立つ.こうした性質の良さは,任意のGrothendieck圏が加群圏の``良い部分圏''として特徴付けられるという一種の埋め込み定理(Gabriel-Popescuの定理)の系として導出できる. アーベル圏はプレ加法圏(アーベル群の圏Ab上の豊穣圏)の構造を自然に持ち,Gabriel-Popescuの定理はAb-豊穣圏論での定理であると考えられる.本講演では,より一般のGrothendieckモノイダル圏上の豊穣圏に対して,Ab-豊穣圏論でのGrothendieck圏に相当する性質の良い圏のクラスを定義し,Gabriel-Popescuの定理の類似が成り立つことを証明する.特に,アーベル群の複体の圏Ch上の豊穣圏を考えることでdg圏に対するGrothendieck圏類似が得られるが,準コンパクトかつ準分離的スキーム上の準連接層の複体のなすdg圏がその例になっていることも確認したい. 本講演は講演者の修士論文の結果に基づく.