幾何セミナー


2026/6/8(Mon)

13:30--15:00 理学部 E404/406/408 大セミナー室

平良 晃一

九州大学

Fundamental solutions and time decay estimates for Schrödinger equations with slowly decreasing potentials

本講演では,ユークリッド空間上の Schrödinger equationの基本解の時間減衰評価について得られた結果を述べる.一般に,基本解はポテンシャルの無限遠点での減衰度(あるいは増大度)とその形状によって挙動が劇的に変化し,それぞれ異なる解析手法が必要になる.ここでは,分散型評価と呼ばれる基本解の空間一様的な時間減衰評価を取り扱う.これはミクロな粒子が持つ分散性に由来して,粒子が無限遠方で逃げていく様子を定量的に評価したものであり,非線形解析等に応用を持つ.例えば,ポテンシャルを持たない場合には基本解が(次元)/2のオーダーで時間減衰するが,調和振動子や多様体上のSchrödinger equationを考えると共役点の周りで分散型評価が崩れることが知られている.我々の主結果は,Coulomb型と呼ばれる無限遠方での減衰が遅い負の符号を持つポテンシャルに対して,分散型評価を導出したことである.これは水素原子の電子の挙動を表すモデルであり,物理的に最も重要な例の1つである.しかし,粒子の低エネルギー挙動の制御の困難であるため,既存の解析手法が適用できず,このモデルに対する分散型評価は長らく手付かずの問題であった.本研究では,Strum-Liouville理論によって基本解をWKB解の重ね合わせで表し,退化型定常位相法と呼ばれる通常に比べて弱い振動効果とポテンシャルの弱い減衰性に由来するWKB解の正則性を用いることによって,分散型評価の導出に成功した.これは星屋陽俊氏(東京大学)との共同研究(https://arxiv.org/abs/2603.29731 )である.