複素数体上では、その絶対値の下で解析幾何が展開される。非アルキメデス的絶対値が備わった体上でも同様に「解析幾何」が展開されることが望まれるが、素朴に絶対値から決まる位相を考えるだけでは、位相が細かすぎるためうまく行かない。テイトによるリジッド幾何は、その課題に対し、グロタンディーク位相を使って位相を「剛化」するという方法で一つの処方箋を与えたが、十分に良い位相空間が与えられたわけではなかった。1990年頃、ベルコビッチは、非アルキメデス的絶対値が備わった体上でも解析幾何を展開するのに適切な位相空間を考案した。これは局所コンパクトな局所ハウスドルフ空間でさらに局所弧状連結となっており、多くの場合、この上で普遍被覆を使った議論や測度論を展開するのに十分な良い位相空間を与える。一方で、例えば複素多様体の各点は、開球という非常に簡明な空間と同相な近傍持つのに対し、ベルコビッチ解析空間は(それが「滑らか」であっても)、各点の近傍の様子は複雑であり、その空間上の対象を調べる際には近似物が必要となることがしばしばある。この講演では、ベルコビッチ解析空間がどのようなものかを概観した後、その有限近似として「トロピカル化」について解説する。