トポロジーセミナー


2025/4/30(Wed)

17:00--18:30 理学部 D505/506 セミナー室

宮地秀樹

金沢大学

Torelli群の射影的測地線層の空間への作用の非エルゴード性について

種数が2以上の向きづけられた閉曲面を考える。表題の射影的測地線層の空間とは,閉曲面上の単純閉曲線の集合を幾何学的交点数関数により然るべき完備化をした空間である。射影的測地線層の空間には自然に写像類群が作用する。射影的測地線層の空間にはThurston測度と呼ばれる自然な確率測度があり,写像類群の作用はThurston測度に関して擬不変であることと,写像類群の作用はエルゴード的であることが知られている。この講演では,写像類群の部分群であるTorelli群に作用を制限すると,その作用は非エルゴード的であることを示す。証明は,タイヒミュラー空間論を用いて,具体的に,Torelli群の作用に関して不変な射影的測地線層の空上の非定数(有界)可測関数を構成することにより行われる。時間があれば関連する問題も議論したいと考えている。