マルコフ型確率微分方程式の弱解の存在・一意性およびその数値解析は,係数がnon-Lipschitz条件を満たす場合において,偏微分方程式に基づく手法を用いてこれまで広く研究されてきた.一方で,Kulik-Scheutzow(2020)は"generalized coupling"と呼ばれる確率論的手法を用いて,経路依存型確率微分方程式に関する弱解の存在・一意性・エルゴード性を証明した.なお,この手法はdegenerate stochastic 2D Navier–Stokes equationsのエルゴード性(Hairer-Mattingly, 2006)およびlog-Harnack型の不等式(Xu, 2011)の証明において用いられている.また,経路依存型確率微分方程式に対する類似の性質は,Hairer-Mattingly-Scheutzow (2011), Wang (2011), Bao-Wang-Yuan (2019)などによって証明されている.本講演では,generalized couplingの手法を応用することで,経路依存型確率微分方程式に対するEuler-Maruyama近似の弱収束,特にLévy–Prokhorov距離に関する誤差評価について得られた結果を紹介する.本研究は,濱口 雄史 (京都大学)との共同研究に基づく.